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​ホレンコの友 
巻頭言 2026年3月号

「長い話を聴く」

「女は自分の身に起こったことを知って恐ろしくなり、震えながら進み出てひれ伏し、すべてをありのまま話した。イエスは言われた。「娘よ、あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい。もうその病気にかからず、元気に暮らしなさい。」(マルコによる福音書5:33-34)
            

   日本福音ルーテル教会:札幌教会牧師 小泉 基       
 以前、教会で葬儀についての講演会を開催したとき、質疑応答の時間に手を挙げて質問なさった方がおられたのです。けれどもそれは、質問というよりほとんどご自身の体験談のようでした。事故でご家族をなくされたことから始まる物語は生々しく、時系列は行き来し、時に錯綜し、つい先月の出来事のように語られるのですが、丁寧に耳を傾けると、それは何十年も前のお話だったりするのです。講演会の終了時間が来てしまい、続きは閉会後に伺うことにし、それでもお話は終わることはなく、日を改めてまたお話を聴かせてもらうことになったのでした。
  イエスさまに長い話を聴いていただいたのは、12年間も病とその病にもとづく疎外に苦しんできた女性です。彼女はそっとイエスさまの衣に触れ、病がいやされた後、意図せずして衆人取り囲む中に進み出ることになります。そして彼女は、その場でひれ伏して「すべてをありのままに話した」のでした。それは「多くの医者にかかって、ひどく苦しめられ、全財産を使い果たしても何の役にも立たず、ますます悪くなるだけ」の、つまりは
12年間にわたる彼女の凄惨な痛みの物語でした。長い物語を「すべてをありのまま」に語り、イエスさまは遮ることなく、すべてに耳を傾けて、そして彼女に「あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい」、と語られたのです。
 イエスさまだけでなく、まわりを取り囲んでいた人たちも彼女の物語を聴くことになったでしょう。彼女が人々からの疎外の中で、どのような痛みを負ってきたかを、疎外してきたまわりの人たちも心に刻んだのです。
 講演会においで下さった女性は、教会に来て繰り返しご自身の物語を語られるようになり、礼拝にも続けて出席なさり、その後、時間をかけて学びを深め、そして洗礼を受けてキリスト者としてあゆまれることになりました。自身の物語を受けとめてもらうことで人は癒しを経験します。そしてイエスさまの物語によって、神さまに捉えられ、そして安心して、元気に暮らせるようになるのでしょう。語ることと聴くことの関係の中にわたしたちは招かれ、イエスさまによって力づけられていくのです。

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